建物の特徴

本館に関して

戦後、日仏間の国交回復・関係改善の象徴として、ル・コルビュジエの設計により、1959年(昭和34年)3月に竣工した歴史的建造物です。

1998年(平成10年)に地震に強い建物とするために「免震レトロフィット」と呼ばれる改修工事を行いました。同年には、地域に根差した優れた公共施設として建設省(当時)より「公共建築百選」に選定されました。

そして、2007年(平成19年)12月には「国の重要文化財(建造物)」に指定されました。

写真:新良太
階数 地上3階、地下1階、塔屋1階
構造 鉄筋コンクリート造
設計 ル・コルビュジエ
監理 坂倉準三、前川國男、吉阪隆正、文部省管理局教育施設部工営課(当時)
施工 清水建設株式会社
着工 1958年(昭和33年)3月
竣工 1959年(昭和34年)3月
建築面積 1,587平方メートル
延床面積 4,399平方メートル
展示室 1,533平方メートル

「無限に成長する美術館」の構想を実現

ル・コルビュジエの考えた「無限に成長する美術館」とは?

ル・コルビュジエが考えた「無限に成長する美術館」とは、展示空間が渦巻きのように螺旋(らせん)を描きながら延びているので、美術作品が増えても必要に応じて外側へ増築して展示スペースを確保できるというもので、美術館として無限に拡大していくことを可能としています。国立西洋美術館(本館)は、ピロティーとなっている1階の正面入口から建物の中心となるメインホール(「19世紀ホール」)に入ると、スロープで、2階の展示スペースへ昇り、回遊することができます。

ル・コルビュジエが長年追求した「無限に成長する美術館」のアイデアを実現した美術館は、世界に3つあり、その一つが上野の国立西洋美術館です。その他はインドの「サンスカル・ケンドラ美術館」(1957年)と「チャンディガール美術館」(1965年)です。国立西洋美術館は、その中で最も完成度の高い美術館として評価されています。

写真:新良太

ル・コルビュジエ建築のキーワード「モデュロール」

「モデュロール」とは、ル・コルビュジエが考え出した建築の寸法を決めるルールで、黄金比と身体のサイズを利用してつくった定規です。例えば、人(183cmのヨーロッパの男性)が手をのばした高さ(226cm)を住宅の天井にちょうどよい高さと定めました。このようにして、建物、部屋、さらに家具の大きさなども「モデュロール」で決めています。

新しい建築のための5つの要点

ル・コルビュジエは近代建築を成り立たせる5つの要点を提案しました。

  1. ピロティ
    建物を柱で持ち上げて地上部分にできる吹き抜けの空間です。人も風も自由に出入りできる気持ちのいい場所です。
  2. 屋上庭園
    屋上にはさんさんと陽がふりそそぎ、植物を植えたり、日光浴を楽しんだりして、都会の中でも自然を感じることができます。かつての瓦屋根の建物ではできなかったことです。
  3. 自由な平面
    建物を支える壁(構造壁)と別に設けられた、空間を仕切る壁でつくられる平面です。これによって自由な形の部屋をつくることができます。
  4. 横長の窓(水平に連続する窓)
    柱や壁にじゃまされずに壁面の横幅いっぱいにあかられた窓からは、光を部屋のすみずみにまで取り入れることができます。
  5. 自由なファサード(正面)
    建物を壁の代わりに柱で支えることによって自由にデザインできるようになった壁面のことです。